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August 26, 2005

体験マーケティングの新潮流(1)

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「ブランド・エクスペリエンス」―このところ、マーケティング担当者なら誰もが“呪文”のように口にする。「モノ」を売るのではなく、「体験」を提供するという考え方だ。富裕層マーケティングの世界でも、「体験」重視に舵を切るラグジュリー・ブランドが相次いでいる。明らかに富裕層の価値観も変わりつつある。

車のCMのコピーで「モノより思い出」というのがあったが、今お金に余裕のある人々が求めているのもまさにこれである。彼らのニーズにこたえるため、これまで以上に“experience”を重視したサービスが注目されている。

最近、富裕層向けにこれまでになかったラグジュリーな旅を提供する旅行会社が国内外に増えている。これまでバックパッカーしか行かなかったような、インドのジャングルやエチオピアの自然などに、お金に余裕のあるアクティブな40~50代の関心が高まっており、大自然の中でもエアコンや清潔なベッド、さらにはシャンパンまで用意してくれるサービスが、お金さえ出せば手に入るという。特にカスタムメードの旅が好評で、国内のある超高級旅行企画会社には、1,500万~2,000万円の高価格の商品であっても、外国人や国内の企業経営者からの問い合わせが多いという。

キーワードは個人的で特別な体験。

この時流にラグジュリー業界も、ぜいたくな店舗体験やオーダーメイドの商品をアピールすることで対応しようとしている。

中でも一歩抜きん出ているのが、今年話題となったルイ・ヴィトン表参道店の会員限定クラブ“Celux Club”。会員制度をとることで、一般の買い物客と、VIP顧客を差別化する。会員は「その他大勢」の買い物客とは一線を画した専用フロアにカードキーで入るところが特別な気分を盛り上げる。クラブでは、ヴィトンやその他のブランドの限定品を買えるだけでなく、日本酒のテイスティングパーティーや、スターウォーズ最新作の先行試写会など、会員限定の特別なイベントが多数用意されている。

また、ブルガリやアルマーニなどは高級ホテル事業に乗り出している。ブルガリはすでにミラノにホテルを持ち、今度はバリ島にもオープン予定。アルマーニは2008年、“Armani Hotels and Resort”の一号店をドバイにオープンするが、完成すれば世界最高層ビル、175室の客室と160のラグジュリーアパートを持つ施設になるという力の入れようだ。

この背景には、特にヨーロッパの富裕層がモノよりも、ぜいたくな旅、スパやグルメなどにお金をつぎ込むようになっているという変化がある。しかも、普通のぜいたくでは満足できない。

富裕層専門の調査会社Luxury Institute(本社NY)のMilton Pedraza社長の言葉は、彼らの心理をうまく表現している。“If I’m going to spend thousands of dollars on something, I want the whole experience to be a fairy tale.”(Newsweek7/25, 8/1号)

一般のレベルでも、「お金で買えない価値がある」というCMもあった。そんな時代の雰囲気は富裕層に限らず人々のあいだに根付いていくのだろうか。

August 26, 2005 | | Comments (0) | TrackBack

August 22, 2005

店舗体験を重視するラグジュリー・ブランド

今やインターネットは企業・消費者双方にとって無視できない存在だが、ブランド価値の低下という落とし穴もある。欧米のラグジュリー・ブランドの多くが、ネット通販はおろか、公式サイトの展開にも依然慎重で、実際の店舗で得られる体験にこだわるのはそのためだ。

イタリアのファッションブランド、「プラダ」のホームページをご覧になったことがあるだろうか?(www.prada.com
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アクセスすると、Pradaのロゴと写真が一枚出てくる。しかし、それだけ。ロゴをクリックしても写真をクリックしても何も出てこない。店舗のアクセスや問い合わせ先くらい載せてもいいようなものだが…。このサイト、手抜きではないか?

実はこれ、確信犯だそうだ。

「プラダ」はもともと、店舗体験を重視している。store
建築家レム・コールハースの手掛けたNYの旗艦店や、表参道店のハイテク試着室などは有名だが、これらの店舗を“epicenter”(震源地)と呼んでいるように、顧客に足をはこんでもらい、ぜいたくな店舗でおもてなしをするというのが基本的なスタイルなのだ。

今やインターネットは企業にとっても消費者にとっても明らかに無視できない存在。ただし、落とし穴もある。インターネットは、手軽で早く、便利だが、高級ブランドの店舗を訪れるようなラグジュリー体験とは対極にある。ネット販売といえばどうしても安く買える、というイメージすらある。

ブランドの価値を落とさないようにするにはどうしたらいいか、この問題に対する現状の解答が「プラダ」のサイトではないか。ちなみに、フェンディのサイトも現在トップページのみだが、これがプラダ同様の確信犯なのか、“under construction”なのかは定かではない。(http://www.fendi.it/

ちなみに、最近ではほとんどの一流ブランドが立派なホームページを持っているが、公式サイトで商品の販売まで行っているものはグッチ、エルメス(アメリカのみ)など数少ない。

高級時計の「ブライトリング」も充実したホームページをもっているが、ネット販売は行っていない(http://www.breitling.co.jp/)。それでも、インターネット効果で2002年以降米国内でのカタログ配布数は30%減少し、ブランドの売上は35%以上増加したという。そんな魔法のような威力を持つインターネットだが、「ブライトリング」のマーケティング・ディレクター、ベン・バルマーはこう語っている。「ラグジュリーブランドは、“buying experience”を提供しなければならない」

当面、ホームページで店舗体験以上のものを提供するのは難しいようだ。

August 22, 2005 | | Comments (1) | TrackBack