« May 2005 | Main | July 2005 »

June 03, 2005

マーケティング発想で勢力を伸ばすキリスト教右派(1)

宗教とマーケティング。両者の関係は意外と古い。しかし、マーケティング手法による信者獲得という点で、おそらく現代アメリカの福音主義派の右に出る宗派はないであろう。顧客満足度、ロイヤルティ・プログラム、CRM、ニッチマーケティング、ブランディング、そして多数のMBA… 企業顔負けのやり方で“新規顧客”を増やし、巨大化するこのプロテスタントの一派はまさに「メガ・チャーチ」の呼び名にふさわしい。顧客の若返りを狙う経営者よ、メガ・チャーチに学べ!

churchマーケティング、ブランディング、MBA・・・といっても企業の話ではない。アメリカでは今、ビジネスの手法を取り入れた、メガ・チャーチとよばれる大規模な教会が次々に誕生している。

プロテスタントの中の、特にエバンジェリカル(福音主義派)教会は、ホームデポやサブウエイのチェーン店のように数を増やしており、影響力も大きい。

BusinessWeek誌(5月23日号)によると、ヒューストンにあるレイクウッドチャーチはその一つ。毎週末3万人もの人が訪れる。カリスマ牧師のオスティーン牧師は、毎週日曜、全国ネットのテレビに登場する有名人で、著書は2,500万部を売上げたベストセラー。彼は99年に教会経営を任され、以来参加者を以前の3倍に、寄付金も4倍に増やした。さらに、コンパック・センター(NBAのチーム、ヒューストンロケッツの元本拠地)を9,000万ドルかけて大改造し、16,000名を収容する新施設をオープンする計画。

このような、まるで起業家のような牧師や、MBA資格を持った経営幹部が運営するメガ・チャーチの主なターゲットは、元々教会に行かない人や従来型の教会に不信感を抱いている人たちだ。そのため、極端な例ではあえて十字架を掲げないなど、一見教会らしくないつくりにしているところもある。雰囲気としては企業のカンファレンスセンターやエンタテイメント施設に近い。スターバックスのようなカフェや託児所を備えたものもあり、顧客満足を高める工夫をしている。また、説教だけでなく、信者のために無料で財務相談や離婚相談にのるなど、リピーターを引き付けている。

南部バプテスト教会(プロテスタントの一派)は今年1,800もの教会を新設する計画だが、その成功の裏にはマーケティングがある。カウボーイのための教会、カントリーミュージック教会、バイク愛好家のためのモーターサイクル教会など様々なニッチな層を狙った教会をオープンし、聖書も“Biblezine”というように、雑誌風にアレンジした。ヒップホップ系やティーンの女の子向けもあるという。また、ウオーレン牧師の著書は、2,300万部を売上げたが、pyroと呼ばれる手法を使ったという。

その他、オクラホマ州のある教会では、子供向けの日曜学校をディズニーランド風にして子供達のハートをぐっとつかみ、彼らに両親を教会へ誘わせる、というがこれもうまい手だ。
また、イリノイ州のウイロークリーク・チャーチは、マッキンゼー式のブランディング手法で、ブランド価値を高めた。ちなみに、同教会は、そのビジネスモデルを、希望する他の教会にも伝授している。このトレーニングは有料だが、会員教会がすでに450を数えるほどの好評ぶりだという。

こうしたメガ・チャーチが増えた背景には、9.11以降、よりスピリチュアルなものを求める人が増えていることもあるが、多くの人は伝統的な教会に価値を見出せないでいる。メガ・チャーチは大衆のニーズに応えられる教会を目指し、がんばっているがこの勢いはどこまで続くのだろうか・・・。

なお、Church Businessというサイトでは、ビジネス的に優れた教会を表彰する“Innovative church awards”を公開している。

June 3, 2005 | | Comments (1) | TrackBack