ブログ世代の「恒常的関心分散症候群」
久々にプレスクラブ(外国特派員協会)での昼食会に出かけた。米PR会社エデルマンのCEO、リチャード・エデルマンが今、話題の「ブログ」について語るからだ。予想通り会場はほぼ満席だったが、競合PR会社の面々よりも各国大使館関係者の出席が目立ったことは意外だった。
“The Blog Revolution” と題した講演の中でエデルマンは、ブログが既存メディアや企業広報にいかに大きな影響を与えているか実例をまじえながら語り、情報の流れ=コミュニケーションの世界に地殻変動が起きつつあることを指摘。そうした話もそれなりに刺激的だったが、なぜか一つの言葉が印象に残った。
“Continuous Partial Attention”
「今の消費者は疑い深いだけでなく、continuous partial attentionの状態にある」という文脈の中で出てきた言葉だ。直訳では「連続した部分的関心」、意訳では「恒常的関心分散症候群」といった感じだろうが、ここは一つ、エデルマン自身の説明に耳を傾けよう。
“What is continuous partial attention? It’s when I go to the gym to work out, I see an investment banker who’s got a BlackBerry* on his belt, he’s got a cell phone on his side, he’s reading the Wall Street Journal, he’s watching CNN or CNBC, and he’s exercising. That’s five things at the same time. If you watch you kids, and you watch them online. They have five different instant messaging conversations going at the same time. Quite stunning! Nobody is paying full attention any more. (* 北米で人気のハンドヘルド端末)
要するに、大人から子供まで、もはや一つのことに集中しない(できない?)どころか、つねに複数のことを同時にするのがあたりまえ。だから、関心が見事なまでに分散してしまっている、というわけだ。
日本で「ながら族」が流行語になったのは1958年。「じゃ、“Continuous Partial Attention”なんて今に始まったことではないじゃないか」との声も聞こえてきそうだが、当時の「ながら族」は、新聞読みながら食事をする、ラジオを聴きながら勉強するといった程度。それに比べ、「恒常的関心分散症候群」となると、関心の分散の度合いもハンパではない。
「じゃ、どうしたら、そんな落ち着きのない消費者の関心を惹きつけることができるのか」。それが企業にとっても、政府にとっても、PR・広告会社にとっても、大きな課題となる。近年、幼児のあいだで増えているADHD(注意欠陥・多動性障害)。一つのことに集中できず、注意力が持続しない子供たち。その点では、今日の消費者もADHD化しているのではないか。となると、これはなかなかに難題といえよう。
May 12, 2005 | Permalink
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