某外国企業へのプレゼンの準備でこの数日、徹夜に近い作業が続いて
いたのですが、ようやく昨日、来日したマーケティング・ディレクターへの
本番プレゼンを無事終え、高い評価をいただくことができました。
というわけで、ちょっと時間の余裕ができたので、今週はじめにテレビで
偶然知った素敵な話を書くことにします。
クリスティーヌというフランスのエステティシャンの話です。
エステティシャンといっても、彼女の職場は通常のエステサロンではなく、
パリ郊外ヴィルジュイフにある病院の中… そしてお客さんはがん治療を
受けている女性の患者さんたちなのです。
抗がん剤治療を受けると、顔にむくみが出たり、髪の毛が抜け落ちたり、
そんな副作用に苦しむ人が多いのですが、女性の場合、そのつらさは
男性の想像を絶するものがあると思います。
蒸し暑くてスカーフやかつらを取りたくなっても、人前や家族の前でも我慢
したり、美容院やエステからも足が遠のいてしまう。それに抗がん剤治療は
高いので、なかなかお洒落にまで手が回らない…
それやこれやで、ますます気が滅入ってしまうのだそうです。
そんながん患者一人ひとりに、クリスティーヌさんは無料でエステを施して
いるのです。フェイスマッサージから頭皮マッサージへ…彼女の手の動きは
どこまでも優しく繊細です。マッサージを受けている女性患者のうっとりとした
表情。。見ている方までうっとりしてしまうほどです。
つるつるの頭を優しくマッサージしながら、「気がついてるかしら。あなたって
頭のかたちがとってもきれいね。ほら、こんなに丸みを帯びていて…」
そう話しかけるクリスティーヌの口調までがとても自然なのです。彼女の指の
動き同様、そこには力みとか不自然さは微塵もありません。
担当のナースと相談しながらも、基本は患者さん一人ひとりの希望に応じた
施術をしているとか。ある人には口紅や頬紅を、またある人にはネイルを…
といった感じです。
きれいになることだけが目的の普通のエステサロンと違い、病院でのエステ
の目的は、患者さんの話に耳を傾け、気持ちを安定させることで治癒への
希望をもってもらうことにあるのだそうです。
実際、同病院の医師によると、クリスティーヌさんのエステで気持ちが楽に
なり、前向きになった患者さんは治癒効果もアップするそうです。
実はこの無料エステ… クリスティーヌさんの発案ではなく、フランスの
CEW(Cosmetic Executive Women)という団体が10年以上も前から進めて
いる「病院内にビューティーセンターを」という運動なのです。
1986年に設立されたこの協会は、美容・ファッション業界、化粧品の広告
を制作する代理店、化粧品のパッケージ会社などの女性役員をメンバーと
したNPOで、病院内のエステに用いる化粧品類はすべてメンバーの会社が
寄贈によるものですが、商業主義を排するため、すべてブランド名を隠すと
いう徹底ぶりです。
最初は半信半疑であった病院側も、患者さんの表情が見違えるように明るく
なったり、治癒効果も向上するのを見て、院内にエステサロンを設置したり、
医師やナースとの連携プレイを積極的に奨励するようになったそうです。
クリスティーヌさんはそのCEWに登録されたエステティシャンの一人ですが、
完全予約制のため、半年先まで予約で一杯だそうです。それほどまでの
人気は、エステティシャンとしての彼女の“腕前”もさることながら、やはり
彼女と患者さんとの関係が“本物”であり、ごく自然だからでしょう。
「病院内にあっても、このエステサロンは患者さんが<患者>であることを
忘れる空間なんです。顔のマッサージをしてもらい緊張がほぐれると自然と
いろいろ話をしてくれるようになります。だからたっぷり時間をかけて施術を
するのです」
そんなクリスティーヌさんの自宅での光景も感動的でした。理解のある夫と
食卓で手作りの夕食を楽しみながら、「今日はこういうことがあったのよ」と
語るクリスティーヌさん。。その話にうれしそうに頷きながら耳を傾ける夫。。
そこでのクリスティーヌさんが語った次の言葉も実にいいですね~
「自分が癒しを求めている状態では他人に尽くすことはできません」
彼女自身が満足しているからこそ、人を満足させることができる。。
自分自身が愛で満たされていなければ人を愛することは難しい…そう
言い換えることができるかもしれません。
これはなんにでも言えることですね… エイコンもクライアントとそういう
関係を築いていきたいと思っています。
そして、日本の病院にもこうしたエステサロンが一日も早く誕生するよう
心から願っています。
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