昨日は某クライアントの広報課長も交え、制作会社の最終選考が
ありました。競合プレゼンなどでは審査される側に立つことが多い
のですが、コンサルティング・サービスを提供している場合は、
今回のように審査する側に立つことがあります。(両方の立場を
経験すると、いろいろ学ぶことも多いですよ)
今回もそうでした。
実は最終選考のはるか前、GW直前に行われた1次選考の場で
結論が出ていたのです。それをご披露する前に、まずは皆さんが
審査委員だったら次のA社とB社のどちらに軍配を上げますか?
A社:経験豊富でベテラン揃い。つねに費用対効果を考え、最小
のコストで最適のソリューションを提供してくれる。制作物づくり
においてもマーケティング的な考え方が徹底している。
B社:平均年齢もA社よりは相当若く、経験も豊富でない。やる気
はあるが、制作物づくりでは「いいデザイン」を心掛けている。
普通なら迷わずA社ですよね?
しかし、私たちが下した結論は逆でした。「えっ、どうして?」という
声が聞こえてきそうですね(笑)
tangibleな評価基準では圧倒的にA社が勝っているのですが、
intangibleな評価基準で重要な問題(欠陥)があったのです。
人間性の問題です。「肌合い」とか「ケミストリー」といった言葉で
置き換えることもできると思います。では、ここで1次審査のとき
の模様を少しだけ再現してみましょう。
A社は自己紹介や自社のケイパビリティはすっ飛ばし、冒頭から
「どの程度のリターンを望んでいるのか」「何を達成したいのか」
と質問攻め。しかも、「質問」というより、「尋問」に近い口調です。
それに対し、B社の担当者はまずクライアントの悩みや言うことに
「耳を傾け」、それに誠心誠意こたえようとする姿勢が前面に出て
いました。
ところで、A社のこうしたスタイルを表現するのに、ぴったりの英語
があります。
abrasive
この言葉の「研磨剤」という原義から皆さんは
どんなニュアンスを想像しますか?
研磨剤で。。もっと分かりやすく言えば紙やすり
で肌をこすられるとどんな感じですか?
ざらっとして実に嫌な気分になりますよね?
辞書には、「耳障りな」とか、「不快な・イライラ
させる」、「かんに障る」といった訳語が載って
いますが、要するに紙やすりで肌をこすられた
ときのあのぞっとする感触なのです。
これではA社を選んだ場合、言っていることがいくら正しくても、
制作物を発注するが「肝に銘じて」おくべき鋭い的確な指摘が
いくら含まれていようと、クライアントの担当者が疲れ果て、
苛立つことは目に見えています。
その点、B社は経験不足でも、「謙虚さ」と「ひたむき」な気持ちが
強く感じられました。
プレゼンに限らず人間関係でもそうですが、「正しいことを言うこと」
=「いい効果を生む」とは決して限りません。世の中、そんな単純
なものではないのです。
ただ私たちは誰でも、経験を積めば積むほど、自信がつけばつく
ほど、「謙虚さ」とか、「ひたむき」な姿勢を忘れがちです。
これは危険な落とし穴ですね~
今回の制作会社選定で得た教訓を自らの戒めとしなくては。。
そんな気持ちを今、噛みしめています。
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