先週の木曜から金曜にかけて、「サブプライムローン・ショック」が全世界を駆け巡りましたね。来るものが来たかという感じです。でも、「そもそもなんでこうなったの?」と考えているうちに、7月30日号BusinessWeek誌のカバーストーリーを思いだしたのです。
金融関係者のあいだでもちょっとした話題になった「Death Bond(死の債券)」特集です。詳細はリンクで見ていただくとして、要するに、70歳以上の高齢者から生命保険を安く買い取って金融商品に仕立てたものです。
あたりまえの話ですが、死亡保険金は本人が死んではじめて支払われます。となると、高齢者にしてみれば、自分が手にすることのない保険金をあてに高い保険料を払い続けるよりも、生きているうちに少しでも現金化できればうれしい。そう思っている人は結構多いはずです。そこに目をつけて、安く買いたたく。こうして買い集めた生命保険が200本程度になったところで証券化して投資家を募るという仕組みです。
なお、その後の保険料は買い取った側(life settlement provider)が払い続け、そのかわり原加入者が死亡したらその死亡保険金をかわりに受け取ります。ということは、原加入者ができるだけ早く死んでくれた方が儲けも多くなります。Death Bondが、ウォール街がこれまでに産み出した金融商品の中でも、“most macabre”な(最もぞっとする)金融商品と言われるのはそのためです。
もっと言えば、早く死んでくれなくても、いつか必ず死ぬわけなので、リターンも安定(現在8%程度)しているほか、市場の乱高下にまったく左右されないという“強み”も持っています。人の死は金融市場の動きとリンクしていないからだとか…たしかに、それはそうだけど…
こういう安定性に目をつけたのが、ヘッジファンドや投資銀行です。生命保険会社自身までが、このDeath Bondへの投資を増やしています。こわいですね。しかも、ムーディーズやフィッチのような大手格付機関までが、まもなくDeath Bondの格付けを始めるというではないですか!
でも、「リターンさせよければ何でも許される」…そう考える人が増えてくると、世の中、暗くなりますね。ほんとにそれでいいのかな?
冒頭のサブプライムローンにしたって、元は、なかなか住宅ローンが組めない人(低所得者や、クレジットカードの返済が遅れたことのある人)向けに開発された住宅ローンですよね。そこまでは結構な話です。
でも、一般の住宅ローンより当然利息は高いので、借りやすくするため、貸出当初は年利5~6%程度に抑え、3年目ぐらいから金利が10%前後に上がる仕組みになっています。これだと、担保の住宅価格が上昇すればなんとかやっていけるにしても、今のような状況では、金利が上がれば、返済できなくなるのは目に見えています。
それだけならまだしも、むしろ問題は、こうしたサブプライムローンの借り手の返済を原資にした高利回りの金融商品が開発され、それに機関投資家やヘッジファンドが見境もなく、むらがったことでしょう。
これも「死の債券」同様、「人の不幸で金儲けしよう」ということじゃないですか。結局は…
ムハマド・ユヌスおじさん、なんとか言ってあげて!!
最近のコメント