先週届いたAdvertisingAge誌を読んでいたら、衝撃的なタイトルが
目に飛び込んできました。
It's time do do away with 'About Us' pages.
どんな企業や団体のウェブサイトにも、"About Us"というページが
ありますよね。そんなページなんか廃止してしまえ!というわけです。
(本文中では「廃止」どころか「禁止」すべしという過激な表現が…)
これを寄稿したのは、What's Next Blogで知られる
B.L. Ochman女史。自身、アルファブロガーである
だけじゃなく、ネットやブログに関するコンサルタント
としても大活躍。
ごらんのとおり、やさしそうな顔をしている割には、
言うことが過激ですね~(笑)
その過激さにつられて読み進むと、ヤコブ・ニールセンのこれまた
過激なコメントが引用されています。
「企業は、自分が何者かを依然、ワンパラグラフで説明
できないでいる」
これは、ニールセン博士が、計63の団体(企業・公的機関・NPO)の
ウェブサイトを最近、調査した際、"About Us"ページに関して述べた
コメントです。5年前に行った同様の調査と比べ、"About Us"ページに
進歩があまりみられないどころか、ユーザーの満足度はむしろ低下
しており、その原因の一つが長ったらしい説明にあるのだとか…
Jakob Nielsenといえば、ウェブのユーザビリティ工学
の分野では、「彼の右に出る者はいない」と言われる
最高権威。。
デンマーク工科大学で博士号を取得したので、「博士」
の称号付きで呼ばれるケースが多いのですが、この
ニールセン博士自ら運営するサイト、useit.comに連載
中のコラム『Alertbox』は、ウェブ制作者のバイブルと
して長年にわたり読みつがれているほどです。
かつてユーザビリティの観点から「フラッシュ」の使用に猛反対した人、
辛口の批評家としても有名ですね。
でも、「辛口」という点では、Ochman女史も負けていませんね~
ワンパラグラフでもまだ長すぎる、として次のように主張するのです。
「自分が何者かをワンセンテンス(本当ならワンフレーズ)
で説明できなくてはホンモノとは言えませんよ」※そのワンセンテンスをトップページに掲載すれば、About Usと
いったページを別に作らなくても済むでしょ…というわけです。
ハイ、お姉さま、おおせのとおりです(笑)。。
それにしても、痛いところを突かれてしまいました。というのも、まさに
これこそが、エイコンにとっても長年の課題だからです。
いくつもの領域にまたがりながら多面的に事業展開しているせいか、
「エイコンは“何屋さん”です」とひとことで言うのが、意外と難しいの
です。
「ひとことで言う」で思い出しました。
らっこがNew York Timesの記者をしていた頃の話です。入社して
まだ2年目の頃だったでしょうか、ひと月かけて取材し、あるテーマ
に関して2,000ワードの読み物記事をようやく書き上げ、上司に見て
もらったときのことです。
※新聞記事で2,000ワードというと相当の長文記事ですよ。
当時の上司はアイルランド系のベテランジャーナリストでしたが、その
彼がらっこが差し出した数枚の原稿を読み終えて、こう言ったのです。
「この記事のポイントを、ひとことで言ってごらん」
自分としてはいろんな要素を魅力的に盛り込んだつもりだったので、
「えっ、ひとことで…ですか~?」としばし考え込んでいたら、上司は
らっこの「血と汗の結晶」(笑)ともいえるその原稿をやおらびりびりと
破り捨てたのです。
「どんなに時間をかけて長文を書いても、そのポイントを
ひとことで言えないということは、自分の頭がまだ整理
できていないということだ」「自分自身が整理できていなのに、読者が読んで理解
できるわけがないじゃないか!」
これはらっこにとって、メウロコの体験でした。エイコンでの仕事にも
このときのいわば「原体験」と反省がつねに根底にあります。
どんなプレゼンでも、パワポで100画面のものをつくるより10画面に
まとめる方がはるかに難しいものです。本当に伝えたいものは何か
が分かっていないとできないからです。
本当に伝えたいキーメッセージというのは、贅肉をとことん削ぎとり、
枝葉を刈りとらないと見えてこないものですが、この作業、実は相当
の集中力と持続的思考を要するプロセスなので、正直しんどいもの
です。忍耐力と苦痛に耐える力も必要になります。
でもそれだけに、キーメッセージの輪郭がくっきり見えてきたときの
喜びもひとしおです。
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